画商の目

  画商の息子として生まれたこともあって、 物心ついた時から画廊の2階に住んでいました。自分で開廊をしてまだ7年ではありますが、 父の画廊で働いていた時を含めると20年近くになるかもしれません。 そのような環境で育ったこともあって、 「景気の良し悪しでこれほど左右される業界は建設や不動産業界と肩を並べるくらい変動するのだなぁ」と実感しました。
今は、 周知の通り「100年に1度の大不況」と言われている時であります。 美術品の相場も例にもれず、 今まで高価で買えなかった絵(名品)がこの大不況で、 思わない安価で手に入れることが出来ます。 その為、 良い絵があれば、どんどん仕入れるようにしています。 景気がもどれば、(すべての作品ではないが)本当に価値のあるもの(名品)は、必ず見直される時がくると思っているからです。 最初そのような名品を手に入れた時は、 しばらく売らずに持っていようと思って買うのですが、 残念ながら安価で良い絵から売れていってしまいます。 (嬉しさ半分悲しさ半分)たまに他の業種の方々と景気の話をした時に (こんな景気に、高価な絵は売れないでしょう?) と言われるが、 実はそんなことはないのです。 俗にいう良い絵(名品)といわれる絵画がよく流通する時期が2回あり、 景気の頂点いわゆるバブルの時と不況の時がよく動くように思います。
それをよく知っているコレクターが今、 良い作品(名品)を安価で手に入れるために探し求めているようです。 私自身も金銭面で余裕があれば、 売らずに蔵にでもしまっておきたいというのが本心ですが・・・・・・(笑)
 今、 関西の画商は、 超高齢化時代に入っており、 おそらく画廊の店主の平均年齢は、 60〜70才代の方々が経営されています。 その下の40〜50才代の店主が少ないのは、 平成元年にバブル崩壊以降、 長引く不況が続き画廊で修行する社員さんが少なかったことや、 画商の2代目や3代目さんがお店を継がず、 他の業種に行ってしまったことが原因であると思われます。 これはある意味、 この美術業界のパイの縮小になってしまいます。 そうなることで今まで創り上げられた、素晴らしい美術品が地に渦もれたり消えてしまうことにもなりかねません。 また、 これからの現代作家の発表の場も少なくなってしまいます。 私々の画商の使命は、 素晴らしい芸術品を後世に残し、絶やすことなく展示会などを通し、 紹介し続けることではないでしょうか。 また今からの画家(若手現代画家)は、 本当に楽しみです。 それは、 不況に育った作家は、 本当に実力のある作家(オリジナリティー豊かな)がうまれるからです。 売れないこの時期に出てきて残った作家こそが、(本物)の次世代のスターに成りえるのではないのでしょうか。
 現在、 私の店は洋画 ・ 日本画 ・ 掛軸の物故作家(故人作家)を中心に取扱いしています。 また、その作品を業者(画商さん)の方々に販売している絵画の卸業みたいなお店になっています。これからは一般のコレクターの方々にも来店してもらえる店にしていきたいと思います。 そして、新しい作家(現代作家)にも目を向け、 未来のスターの卵を探していきたいと思っています。 この100年に1度の大不況といわれる今こそ、 100年に1度の大チャンスに変えたいと思っています。

株式会社 画廊裕貴
代表取締役 梅田 裕貴