古代の染料植物と色素成分

3)紫色系染料

むらさき(紫根、紫草)

培養の難しい植物で、根を用いるが色素は水に溶けにくい、80℃以上で変質する。根皮を石臼 で挽き、 60℃以下の温水で濾液をつくり、 これに予め灰汁で処理した布を浸し染色する。 色素名:シコニン(Shikonin)

4)青色系染料

あい(藍)

藍の生葉を細かくちぎり揉み、布を入れて染める。米酢を入れると美しくなる。中世では蓼藍の葉を干して乾燥させ、木灰と水を入れて還元醗酵する。表面にきれいな藍緑の泡が出る。 これに布を浸すと澄んだ美しい青色になる。とても贅沢な技法。 色素名:インジゴ(Indigo)

5)褐色〜黒色染料

タンニンによる染料で、植物はくぬぎ(種実)やくるみ(樹皮)など多種類あり、 媒染剤によって黒褐色から黒色に至る多くの色調が得られる。

藍染こぼれ話

 植物色素の中で歴史上有名な藍は昔より染物に多く使われてきましたのは、安価に容易に手に入るばかりでなく、かなり強い染料であったからです。 染料は藍草から抽出したものを藍玉という玉にし、これを溶かして布に浸してから空気酸化するときれいで堅牢な藍色に染まります。
 エジプトに出土した約4000年前のミイラにも同じ染料が使われていて、人類とは関係の深い染料であります。その色素名インジゴ(Indigo)は最大の生産地であったインドに名前が由来しております。藍はインドの経済を支える重要な農産物でありましたが、1880年ドイツ人バイヤーがインジゴを化学的に合成して安価に市場に供給されるようになり、遂にインドの藍栽培、徳島県の藍も滅びてしまいました。
 インジゴについてもう一つの話題があります。最近若い人ばかりでなくお年の方もジーンズを着るようになりましたが、ジーンズにはなぜかブルーが多いのです。 その理由は、 昔リーバイシュトラウスという人がアメリカのゴ−ルドラッシュ時代に、船の帆に使っている丈夫な布で作ったズボンをはいて野山に寝泊まりしていましたが、 丈夫で着やすいズボンとして探鉱夫たちの間で愛用されました。 初めは無色だったのですが、それを藍で染めるとマムシ、サソリなどの毒虫がその染料の醗酵臭をきらって寄り付かなくなることに気付き、以後大流行した名残りが今日ブルージーンズが多いいわれです。生地も最初はテントや幌馬車の幌を使ったのですが、後にフランスのニーム市で量産され、名前がデニムに変ったことがあります。 デニムとは 「ニームの産」 という意味のde Nimeに由来しております。またジーンズの名はイタリアのジェノバ市の水夫がはいていた丈夫なズボンにジェノバのフランス語ジェーヌの名がついたのがその起こりと云われております。

荘一